史の詩集(続)Fuhito Fukushima

福島史(ふくしまふひと)の詩集の続きです。

詩Poem

かの詩人     0033

かの詩人 手のひらから こぼれ落ちる砂を見て かの詩人は嘆いた けっ 胸くそ悪い いっそ口の中に入れちまえば 純朴で哀れなこの砂が どれだけ辛いか わかっただろうに

余計なこと     0032

余計なこと 余計なことばかりして 失恋しまった 腹立ちまぎれに 蹴った小石が 転げて 道端の これまた小石に 寄り添った また余計なことをしちまった

臨終     0031

臨終 白い布を除けてください 最期の息ができません 魂が昇っていかれません 微笑んでいてもやり切れません

運命     0030

運命 エメラルドの海に サファイアのうねり 浮かんでいるのは 雲母の帆掛け 真珠の小舟 悲しく暗く沈んでいるのは 石ころ

サシ     0029

サシ 飢えた猫が 水面で呼吸しなくきゃならない 金魚をじっと見ている 真昼の池の戦慄極まる サシの勝負

サンキスと     0028

サンキスと 疲れたなぁ 生きたもんな レモン哀歌 太陽が口づけする Sun kissと

煩悶     0027

煩悶 槍は刺さらぬ どこにも刺さらぬ なぜ なぜ なぜ ああ 残されたところは 己の胸が 赤く染まった

太陽の交換    0026

太陽の交換 さてさて 太陽は 元気にやっておりますことやら 聞いたところによりますと あまりにもっともなこと 昼に生きている人々が 笑うので かえってあやしくなりました なべぶたを持ち上げる ちょっとの隙に 大きな手があくまで好意的に 熱い無節操な太…

夢の中     0025

夢の中 寝ちまった、寝ちまった 何もかも、忘れるため 寝ちまった 皮肉だ、皮肉だ 何たる嫌味 夢の中まで あなたがいて 夢の中でさえ 僕は追いかけている 走っても走っても 追いつけぬ 流れ星 あ! 落ちた 僕はびっしょり 汗をかいてしまった

ある日のプールの午後    0024

ある日のプールの午後 ここは上級者用だから お前らガキはあっちに行くの ここは25メーター以上、泳げる人しかダメなの 俺泳げるもん 俺なんかイルカと競争したんだぞ 俺は太平洋横断したことがあるもん

黒い鳥との会話     0023

黒い鳥との会話 君は誰だい 青い鳥を追い払ったやつだな 青い鳥なんて初めからいやしない あれは人間が作り出したんだ 俺を悪者扱いするのは やめたまえ 君と俺とは親しいはずだよ そうかもしれない 僕だって君から逃れられるとは思ってないし その気もない…

青い鳥     0022

青い鳥 いつの頃か知らないか 僕の耳に何かが聞こえるようになった そっと耳をすましていると 何も聞こえないのに 何かに一所懸命になっていると ふいに聞こえてくる どこか遠いところから 僕を呼んでいる とても澄んだ美しいさえずりだ 確かに聞こえてくる …

叫び     0021

叫び いつの頃からか 僕の耳に何かが 囁き始めたのは 耳をとぎすますと 聞こえないのに 何かをやっていると 不意に聞こえてくる どこか遠いところから 僕を呼んでる 確かに呼んでる 僕にしか聞こえない 僕の心の叫びよ おーおー

シーズン     0020

シーズン あれは新緑も終わり 君を見かけて視線チラチラ 気のありそうなふうをして 気を引いて 友達になれたとき 雨が軽やかに降っていました やっと1つの傘に入れて 通り過ぎた車が 祝福の泥水かけてくれました あのときの怒った顔、素敵だったな あれは真…

愛する者へのメッセージ     0019

愛する者へのメッセージ 本当の自分はという そんな自分はだれでも心の中に持っているもので その自分が他人と区別される唯一の自分のように 大事に思っているものだけど 人間はどこまでも人間で 全ての人の抱いている本当の自分は 案外似てるものだろう 受…

対面     0018

対面 辛いからといって 苦しいからといって 悲しいからといって それから抜け出ようとするからいけないのですよ いつまでもじっと、それに向かいあう気になりましょう 神はそんなに無慈悲な方ではありませんのよ 今までこんなに夕焼けが綺麗だったことがあり…

白球     0017

白球 君はすべてを その白い球に賭けていた 何もかも忘れて、すべてを賭けていた 愛、君は誰よりそれを愛していた 苦しみ、それと離れることができなかった 楽しみ、わずかな休息がこの上もないものだった 悩み、人並みに悩むこともあった 情熱、みなぎる汗…

つま恋     0016

つま恋 これ以上、夢は伸ばせないさ 体が焼き切れそうだ 今までなんとかごまかして偽り通してきたけれど そんな突っ張りに憧れて 自分の心を満足させていた ただの偽善者 それに気づいたときも まだ何とか理屈をこねて 省みようとしなかった あーそれが真実…

春の日と子犬     0015

春の日と子犬 春、どれほどその光を待ちわびていたか やっと小さな命を地上に出した白い芽は 運命に見放されたのでしょうか 春、その陽気の気まぐれに小屋を飛び出して めくらめっぽう走ってきた子犬に踏んづけられてしまいました もちろん子犬はそんなこと…

地下鉄     0014

地下鉄 影のない白光の世界に 猫が1匹入ってきた 静まり返った大都会の殺ばくとした刃先に 本能的な殺気を感じて 階段を降りて 闇のない世界に入ってきた あまりに空虚に死した空間に 生の息吹とぺたりぺたりの足音が 行き場もなく鉄板に 跳ね返り響いた 猫…

ピエロの昇天    0013

ピエロの昇天 ピエロは疲れ果てた体を横たえ 誰もいない舞台裏で 穏やかな死神の足音に 耳をすましていた そして 途切れ途切れながれゆく音楽に 舞台を眼前で見るよりも正確に 思い浮かべていた さようなら、プリンセス (僕の声はとうとうあなたに届かなかっ…

二十歳     0012

二十歳 無邪気な10年のあと 無意味な10年が過ぎ それを意味づけていく歳となった

虹     0011

虹 雨が上がったのでまっ白な画用紙を 1枚買ってきました あなたの顔はうまく描けないし かといってと、思っているところに あなたがクレパスを持ってきて くれました カーテンを開けて あなたは言いました ー虹をかけましょう あなたは赤、青、緑を 私は黄…

融解     0010

融解 あなたへのさまざまな思いから あらゆる不純物を除き 純粋な愛の炎と化したい 完全なる燃焼 人間の限界を破る偉大なる動力源 全生命をほとぼらせて あなたを磨き上げる 輝く 私の宝石を ひとかけらであろうとも あなたの微笑みは 太陽よりも 大きな光と…

落ち葉     0009

落ち葉 夕焼けの向こうに 夢を追いかけていた人が また1人、今日の世界に 腰を下ろし、パイプの煙に ぼやき、沈む太陽を 見つめている 太陽の沈むのを待ちくたびれていた ほどの若い日々から 太陽の昇るについていけなくなる ほど老いて 置いてきぼりにされ…

夢     0008

夢 よくよく考えてみれば やっぱりあれは夢だった そんなにうまくいくものかと いつもいつも思っていた それがまた あまりにうまくいったものだから いっぺんにバレちまった いつも夢だと気づいたとき 目が覚めてそれっきり 朝まであなたを恋い慕う そんな繰…

息          0007

息 007 ああ、今宵も僕を寝かせるものは何か 人は努力する限り、迷うものだって、 それなら、努力もやめたいなぁ 僕が欲しているのは安息 しかし 僕を駆り立てる生の意匠 安息は遠い遠いところに横たわって 僕を横目で誘っている なんと魅力に富んだ輝きか …

哲学書と雨     0006

哲学書と雨 僕は道を急いでいた 雨の中 哲学書と傘を持って急いでいた 途中 車から荷物を出そうと する人がいた 僕は素通りした 哲学書をかばって、 傘をかざしてあげることもできなかった ああ 大きな誤ちだ 僕の哲学は本の中から出ない あの人なら 優しく…

鳩が飛ぶ     0005

鳩 鳩が飛ぶ 雨に打たれて 鳩が飛ぶ 今日こそは 己、注目を浴びるだろうと 鳩が飛ぶ まわりを見渡し 鳩が飛ぶ 能力なしの弱虫どもめと 鳩が飛ぶ 誰も見ていやしない たとえ空を仰ごうとも 暗い空 何で鳩が見えようか それでも 鳩は飛ぶ 雨にたたられ 鳩が飛…

追憶          0004

追憶 僕はいつの間にか 歩くのをやめて 列車に乗ってしまった 行き先も知らず… どこかに着くさと 外の景色もみなかった いつまでたっても 列車は止まらないものだから 僕は降りられなかった 考えてみればあのときさ 青春を発っちまったのは