史の詩集(続)Fuhito Fukushima

福島史(ふくしまふひと)の詩集の続きです。

ピエロの昇天    0013

ピエロの昇天

 

ピエロは疲れ果てた体を横たえ

誰もいない舞台裏で

穏やかな死神の足音に

耳をすましていた

そして

途切れ途切れながれゆく音楽に

舞台を眼前で見るよりも正確に

思い浮かべていた

 

さようなら、プリンセス

(僕の声はとうとうあなたに届かなかった)

 

プリンセスは舞台の上で

踊っていた

いつものように華やかにうるわしく

端役が1人欠けていることなど

全く気づかず

たとえ気づいても気にかけやしなかっただろうが

 

しかしプリンセスは

自分が満足いくだけの舞台を演じているのに

大テントの中が妙に冷めているのを感じていた

 

プリンセスは冴えぬ顔で引き上げてきた

うわばりを椅子に投げかけると

いつも通り寝入ってしまった

 

ふと耳の中を風がかすめ

プリンセスは目を覚ました

体に震えが来て

思わず両肩に手をやった

 

それは冷たく細いすべすべした肌身だった

 

プリンセスは初めて気づいた

今まで自分が

目覚めたとき

衣装が整頓されず自分の肩に毛布が

かけられていなかった日が

生まれてこのかた 1度もなかったことを