史の詩集  Fuhito Fukushima

福島史(ふくしまふひと)の詩集です。

春の日と子犬     0015

春の日と子犬

 

春、どれほどその光を待ちわびていたか

やっと小さな命を地上に出した白い芽は

運命に見放されたのでしょうか

春、その陽気の気まぐれに小屋を飛び出して

めくらめっぽう走ってきた子犬に踏んづけられてしまいました

 

もちろん子犬はそんなことに全く気づかず

広い原っぱの中を転げ回っていました

 

初めて迎える春でした

初めて見る草原でした

子犬は鼻をたて、かぐわしい春を嗅いでいたのでした

 

柔らかな土にめり込んだ白い芽は

まだどことなく冷たい地表を感じてました

 

ここはまだ冬なのかしら

 

さっきの眩しさがほんのひとときの夢のように思われました

踏みつけられた痛みが確かにあの青空を思い出させてくれます

それに土の隙間からあの白い光がほんの少し入っているのです



子犬は原っぱを行ったり来たりしていました

長い春の日に

疲れ飽きくたびれ

それでも何かを求めていました

 

それから何日かあとのことでした

子犬はいつものように食べ物を探していました

 

そのとき今までに嗅いだことのないほど

素晴らしい香りが鼻をつきました

風上の方へ進んでいくと

そこにはとても美しい花が咲いていました

 

その花の中を思う存分、駆け回って

子犬はようやく小屋に帰ることができました