春の日と子犬
春、どれほどその光を待ちわびていたか
やっと小さな命を地上に出した白い芽は
運命に見放されたのでしょうか
春、その陽気の気まぐれに小屋を飛び出して
めくらめっぽう走ってきた子犬に踏んづけられてしまいました
もちろん子犬はそんなことに全く気づかず
広い原っぱの中を転げ回っていました
初めて迎える春でした
初めて見る草原でした
子犬は鼻をたて、かぐわしい春を嗅いでいたのでした
柔らかな土にめり込んだ白い芽は
まだどことなく冷たい地表を感じてました
ここはまだ冬なのかしら
さっきの眩しさがほんのひとときの夢のように思われました
踏みつけられた痛みが確かにあの青空を思い出させてくれます
それに土の隙間からあの白い光がほんの少し入っているのです
子犬は原っぱを行ったり来たりしていました
長い春の日に
疲れ飽きくたびれ
それでも何かを求めていました
それから何日かあとのことでした
子犬はいつものように食べ物を探していました
そのとき今までに嗅いだことのないほど
素晴らしい香りが鼻をつきました
風上の方へ進んでいくと
そこにはとても美しい花が咲いていました
その花の中を思う存分、駆け回って
子犬はようやく小屋に帰ることができました