石ころ
ふと道端で 拾ったのは小さな石ころでした
どうしてそんなに気になったのかわかりませんが
そうせずにいられぬ何かが 僕の心に呼びかけたのです
なんとなくポケットに入れていた石ころが
いつの間にか かけがえのないものに思えてきました
僕の心があまりにもさびしかったからでしょうか
苦しくて握り締めたこともありました
悲しくて 涙でそめたこともありました
そうして暮らしているうちに
その石ころは だんだんつやが出てきて
美しくなりました
僕が苦しいときは コーヒー色とブルーに
僕が悲しいときは 水色に
僕以上に 僕の心を知っている
ちっぽけな石ころでした
いつものように ポケットに
小さな石ころを入れて
街に出ました
いつものように 一人
何もすることもないので
石ころを捜してみました
どんなに整った石ころも
どんなに整った宝石も
僕の心に磨かれた石ころには
いやたとえ宝石でさえも
その石ころにはかなわなかったでしょう
僕は前ほどさびしくありませんでした
その石ころを拾ってから
僕は全てを石ころに話してきましたし
石ころは何も言わず
すべてを聞いてくれました
そうしたうちに
僕は妙なことに気づきました
石ころに僕と違った
もう一つの気持ちがあるようなのです
僕が間違ったことをするといさめる心
僕がひねくれるとおだやかにさせる心
それは石ころの心だったのでしょうか
そうしたうちに僕は気づきました
その石ころを拾った街はずれの
大きな木の下にいつも立っている女の子に
石ころは僕に話しかける
勇気を与えてくれました
なんとなく
トントン拍子にうまくいって
友だちになれました