史の詩集(続)Fuhito Fukushima

福島史(ふくしまふひと)の詩集の続きです。

石ころ その後     569

 

69.石ころ その後

 

君の心が僕にあると知ってから

僕にも君しか見えなくなりました

君に何もかも話し

君は何もかも聞いてくれました

 

僕は本当に一人ではなくなりました

君は笑うことができました

その瞳を輝かし 

まばゆい美しさをふるまき

僕に唯一のかけがえのないものとなりました

 

僕には石ころはもう 必要ありませんでした

拾ったところにある 大きな池にそっと沈めて

おこうと思いました

そうすることが 石ころにとっても 僕にとっても

よいことに思われたのです

 

僕は池に行きました

その日だけは君を誘わないで

小さな石ころとのお別れは

一人でするのがふさわしく思われたからです

 

なるだけ遠く 深く沈めてやろうと

僕は石ころを長い間

胸につけたあと 大きく手を伸ばして

力いっぱい飛ばそうとしました

 

そのときです 大きな木のうしろから

君が急に出てきたのは

あとから考えると 不思議なことでした

やめてと叫んだ そのときの君は

神秘的なまでに美しかったのを覚えています

 

でも遅すぎました

石ころは その声が響くのと同時に

僕の手を離れていました

 

君は僕に抱きつきました 力いっぱい

その目から 涙がとめどなくあふれていました

僕には わけがわかりませんでした

 

遠くの方で 石ころが高くはねました

同時に 君は光の黄砂のように砕けて

その池に広がった 波紋の中心に

すっと直線に吸い込まれてしまいました

 

ふと 僕の耳に たったー言

君の声が美しく

あれは私の心だったのです

 

池は いつも無愛想に横たわっています

ただ 僕のポケットに小石はなく

また 一人、心は空洞になりました