史の詩集  Fuhito Fukushima

福島史(ふくしまふひと)の詩集です。

Vol.7-2

 

26.ジレンマ

 

そこにやりたいものがある

だから やらなきゃいけない

それをやることが 僕にとって

何よりも幸せを感じることになる

 

but・・・

 

そこにいきつくのは あまりにも遠い

だから ときどき

僕は見ぬふりをしたくなる

そこから逃げたくなる

 

燃える心に苦しみたくない

今の自分がみじめになるから

 

でも じっとしていたら

何もできない

それを思うたびに

僕の胸は煮えたぎり 体中に火はつくのに

 

but・・・

 

わかっていて何ともできぬ

この空しさは

できぬと決めつけ 試そうともしない

情けなさは

 

そのときだけは燃えても

あとは手を引いてしまう

 

時を待つだけ あてにできぬ

人を待つだけ 会えもせぬ

 

ただ こぶしを握りしめて

自分の頭を抱えているだけ



27.夢の国

 

美しき時代よ

その真っ只中にいるが

果たして そうなのだろうか

 

時は待ってはくれない

いつの間にか 大人となる

抱いている夢は 叶えられぬまま

きっと 忘れようとするだろう

 

何とかしなきゃいけない

今 すぐにでも

飛び出すんだ 怖じけてはいけない

今 しかないんだ

 

自分が終わりたくなければ

やってみろ すべてを犠牲にして

中途半端な気持ちを振り切って

 

だめだ 僕にはできない

安全地帯から出て 夢の国の建設を

すばらしさは知っていても

戻るところを失うなんて

できっこない

 

夢の国 歩こうともしないのに

そんなこといって

悔やむのは 僕なのに

失敗して すべてを失っても

そうしたい ほんとうの気持ち

 

でも できない ぼくにはどうしても



28.海辺にて

 

紅色の砂浜に 足跡つけて

波のように跳ねまわる君

海を見るのが はじめてのように

その大きさに飲み込まれてる瞳

 

水平線のほかは 何もない

どこまでも広く 底の見えない海

君は くたびれたのか

打ち上げられた大木に座ってる

 

砂に指で 何かを書いて

おかしそうに笑っている君

波が押し寄せて その作品を壊すと

顔をふくらましてる あどけない人

 

二人のほかには 誰もいない

沈みかけた太陽が こちらを見てる

君は 貝殻 拾い始めたね



29.窓

 

はじめて君から電話がかかり

僕は何かと電話機をとった

いつものように

二階の窓を開ければいいのに

 

透き通った声

ほんとに君なのかと思うぐらい

一言 二言 話すと

君は急にだまりこんだ

 

明日 海を渡って行くんだって

いつもは だまされている僕だけど

今日は 4月バカでいたかった

 

いつも二階からデート

町であっても知らん振り

そんな君が好きだった



30.ベル

 

きみの家は 角から2軒目

ぼくの きみの家

 

二階建てで 緑に囲まれて

日差しあびて 輝いている

きみに会いたい

 

あのベルを押せば 明るい笑顔で

きっと君が出てくるだろう

 

この丘からの景色は最高

きみに会いたい

 

あの頃 ぼくらにはベルなど要らなかった

今ではきみとの 境界線

 

きみに会いたい

 

疲れ果てたぼくは ただ待っている

きみが窓から顔を出すまで



31.ことば探し

 

あなたに捧げようと

美しいことばを 探しているのに

いつまでたっても 浮かんでこないのです

心の中をそのまま 言い表せる

そんなことばが欲しいのです

 

あなたが瞳を閉じて

うっとりと 何度も噛みしめてくれる

そんなことばが欲しいのです

 

あなたに捧げようと

待てば待つほど 遠くなってしまうのです

僕の気持ちを語ってくれる

あなたが胸に手をあてて ずっと

すべてを悟ってくれることばが欲しいのです



32.橋の上にて

 

村のはずれにある小さな橋

月が川に流れているよ

いつも この上から見ながら

何もせずに じっとしているんだよ

 

寒くはなかったし 忙しくもなかった

僕らは ほんの少しの別れを惜しみあった

他に誰もいなかったし

村はいつもよりさびしかった

 

また会うことが決まっていながら

どうして こんなに悲しいのかな

 

いつも ここにくると立ち止まり

口をつぐんで じっとしているよ

すぐに帰りたくはなかったし

別れたくもなかった

 

僕らは橋が見えなくなるほど そこにいた

何もすることはできなかったけど

 

ただ 愛していた



33.卒業

 

いいかい 覚えておきなよ

今日という日は

ここを抜け出す日じゃない

 

ど真ん中に

つっこんでいく日なんだ

 

楽しかった そんな時代は

終わったかもしれない

友が そう呼べなくなる

時代になるかもしれない

 

卒業した それだけのことさ

一番大きなことは

思い出と埋もれていき

卒業した それだけのことさ

 

いいかい 忘れちゃいけないよ

今日という日は

巣立つ日じゃない

 

荒波の中に

飲み込まれていく日なんだ

 

苦しかった そんな時代は

終わったかもしれない

友が 一人ずつ去っていく

時代になるかもしれない

 

卒業した それがすべてさ

一番 大きなことは

これまでのことがどうであれ

卒業した それだけのことさ



34.十五夜

 

月がとても 風流で

秋風少し 気になるけど

風呂あがり

縁側に出て ひと休み

 

古うちわ 取り出して

蝉が少し うるさいけど

イカをつまみに

たった一人の十五夜

 

何かもの足りない 秋のせい

あの山に 君と取りに行った

すすきが今日はない

 

夜が更けるにつれ 君を

いつの日かの君を

思い出すのは

あの 団子の味

 

きっと あの月は 君をみてるだろう

どこにいるのか 僕は知らない

ただ 君は 月の好きな

月のような人だった



35.函館本線

 

旅の疲れに いつの間にか

眠りにおちて

知り合ったばかりの君に

揺り起こされた

 

窓に広がる 海が輝いて

まばゆいばかりの 赤い夕日

見つめる 君の瞳は動く

飛びまわる海鳥を追って

 

汽車は のんびりと

夏の草原をゆく

君の表情も 流れる景色のように移ろいで

カラスも 山に帰る

 

旅の終わり果てるとき

汽車はなつかしい駅につく

タラップ飛び降りて

名残惜しく 君に

別れを告げる

 

路線橋を渡っていると

始発ベルが鳴りひびく

手を振り

別れを告げる



36.巡る

 

あの空を 広い空を飛び

遠くにいこう

あの海を 緑の海を渡り

遠くにいこう

 

どこまでいくのか

何しにいくのか わからない

信じよう そこに何かがあることを

 

あの風に うずまく風に乗り

遠くにいこう

あの雲を 逃げいく雲を追い

遠くにいこう

 

何があるのか

どうなるのか わからない

信じよう そこに何かが生まれることを

 

そんなことないさ あるはずないさ

出会いもなかった炎が

気づかぬまま 消えてしまうなんて

 

まわりめぐる時間と

空間の中に放り込まれたまま

さまよい さまよい つづけて

 

誰も愛さず 愛されず

汗も涙も流さず

 

もう遅すぎる炎が

いつの間にか 色あせてしまったなんて

 

春夏秋冬を追いかけるのが精一杯

巡り 巡り つづけて また巡る



37.虚構の恋

 

君の飲み残したコーヒーながめて

体を包み込む 寂しさ払いのけ

悲しさ振り切って

僕も出て行こう

このつくられた世界から



38.湖畔の思い出

 

湖畔に一人たたずみ

やさしいそよ風に 髪をながしていた

あなたはどこにいるのでしょう

深い湖は どこまでも荘厳で

答えてくれない

 

あてもないまま ここまで来たけど

これから どうすればよいの

一度だけ 紅葉に 胸ときめかし

二人でボートに乗った湖

今は涙にむせて 砂にひざをつく

 

湖畔は夕暮れ 日が落ちて

かすみゆく山々に 思い募らせ

澄んだ湖は いつまでも

我知らずと 黙っている

 

今日もまた いつものように

何一つ わからなかったの

一度だけ この岸で抱いてくれた

二人で砂にまみれた湖

今はわずかに波よせて 想い揺らぐ



39.夢人

 

夢をみたい すべてをこの頭から追い払って

安らかな夢を ひたすらに

限りなく大きな夢をみたい